サイトの趣旨(背景)

1. このサイトの趣旨

本サイトの作成者(2024年度:東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学分野家族QOL評価学領域講師;2025年度~:東京科学大学保健衛生学研究科小児・家族発達看護学分野教授 佐藤伊織)は、こどもの健康関連QOL(HRQL)に関する質問票「Pediatric Quality of Life Research Inventory (PedsQL)」日本語版を何度か研究で利用したり、他の研究者によりPedsQL日本語版が利用されている研究を見たり、いくつかのモジュールの日本語版開発に携わったりしてきました。PedsQLコアスケール日本語版が最初にできてから10年以上が経ち、多くの研究が蓄積されています。そのため、これまでにPedsQL日本語版が用いられた研究(既報)をまとめたデータベースを作成すれば、これからPedsQLを利用しようとする研究者や、こどもの健康関連QOLに関する知見を得たいと考えている研究者にとって役立つのではないかと考えました。

これまでにPedsQL日本語版が用いられた研究(既報)は、逐次増えていくものですし、そもそも、治験等で収集され公表されないものもあると思います。そのため本サイトの掲載情報がPedsQL日本語版の利用実績の全てであるとはとうてい言えませんが、少しでも多くの情報を集めていきたいと考えています。ゆくゆくは、PedsQL以外の尺度(KINDLやEQ5D-Y)についても手を広げていきたいとも考えています。

なお本サイトは、特にMapi Research Institute(PedsQLの版権を保有する企業)やProf. James W. Varni(PedsQLの原作者)に許諾を得ているものではありません。また、小林京子先生(PedsQLコアスケール日本語版の開発者)をはじめとするPedsQL日本語版の開発者から許諾を得ているものではありません。つまり本サイトは、PedsQL日本語版の公式なサイトというわけではありません。あくまでもひとつの研究活動として発信しているものであることをご了承ください。

2. PedsQL日本語版について

Pediatric Quality of Life Inventory (PedsQL) は、米国でJames W. Varni博士が1990年代に開発した、こどもの生活の質(Quality of Life: QOL)の尺度です。こどもによる自己報告式評価(自己評価)と、保護者がこどもの様子を鑑みて回答報告する評価(代理評価/保護者評価)を備えています。全てのスコアは0~100点に換算(得点が高いほうがQOLが高いことを意味)します。

PedsQLは複数の自己報告型尺度の集合であり、PedsQLコアスケールと、様々な疾患・障害・状態に対応する疾患特異的モジュールがあります。PedsQLコアスケールは、一般的なこどもに共通する健康関連QOLの各側面[身体的機能・感情の機能・社会的機能・学校の機能]に関する尺度です。疾患特異的モジュールの例としてPedsQLがんモジュールは、がんを持つこどもに共通する健康関連QOLの各側面[痛み・吐き気・心配・外見・コミュニケーションなど]に関する尺度です。
詳しくはこちら(文献)Varni 1999, Varni 2001

PedsQL日本語版は、まずコアスケールについて小林京子先生が2005年から2007年頃にかけて開発され、2010年に開発論文が公表されました。日本語版を開発するにあたっては、言葉の翻訳だけでなく、就学年齢が6歳であるなど原版(米国)との違いに考慮して作成されています。
詳しくはこちら(文献)Kobayashi 2010

その後、様々な研究者によって疾患特異的モジュールの日本語版も作成されています

なお、PedsQLの著作権は日本語版も含めてMapi Research Instituteが有していますので、使用許諾はMapi Research Instituteから得る必要があります。ePROVIDEというサイトを通じて申請・購入することになります。
詳しくはこちら ePROVIDE by Mapi Research Trust

3. PedsQL以外の、日本でこどものQOL評価に用いられる尺度

ゆくゆくは下記の尺度についても手を広げていきたいと考えていますので、今のうちに簡単な情報を掲載しておきます。

● KINDL ®

ドイツのBullinger先生が開発した尺度で、当初は「身体的領域」「精神的領域」「社会的領域」「機能的領域」の4領域・40項目で構成されていました。のちにKINDL®として改訂され、6つの領域「身体的健康」「精神的健康」「自尊感情」「家族」「友だち」「学校生活」の6領域から構成される尺度です。こどもが自己評価するものとして幼児版QOL尺度(4歳~、インタビュー形式)、小学生版QOL尺度、中学生版QOL尺度があり、親が評価するものとして幼児版QOL尺度親用、小・中学生版QOL尺度親用があります。

日本語版は柴田玲子先生が主に(初めに)開発されたようで、こちらの本に情報がまとまっています。
また、利用の際には必ずKINDLのホームページで使用上の留意点を確認するようにとのことです。

● EQ-5D-Y

まずEQ-5Dというのが、(頭文字のEが示すとおり)ヨーロッパで開発された健康関連QOL尺度で、成人用といいますか、一般に広く用いられるものです。その小児版がEQ-5D-Yであり、白岩健先生が日本語版を開発されています。国立保健医療科学院のページに日本語での簡単な説明があります。

● KIDSCREEN

もとはドイツで開発された尺度です。奈良県立医科大学のページに詳しい説明があります。